HiFiClubレビューを翻訳掲載
ハイファイクラブのメイン試聴室でウェーバーサシステムズ(Waversa Systems)の有線LANのノイズアイソレーターーを試聴した。
Extは外付けの意味とのことだ。このアイソレーターをMSB PremierストリーミングDACの前段に付けた時と、LANケーブルをDACのLANポートに接続したときの音質の差を調べた。
心配とは裏腹に、違いは意外にも分かりやすかった。主に解像力とSN比が、サウンドステージが体感的に変化がある。聴感上ではシールドがよく処理されていたり、電磁波ノイズ(EMI、RFI)を効果的に遮断した時、質の良いインシュレーターやオーディオラックで振動や共振ノイズを除去した時の結果と効果が共通している。
WLAN-isolator-Ext1、ファクトチェック
WLAN-isolator-Ext1はLANケーブルに乗って入ってくる各種ノイズを除去するしてくれるアイソレーター(Isolator)だ。外観を見ると、クロムでメッキされたシャシーにイーサネット端子が2つ配置されたシンプルなデザインである。当然だが、一方が入力で、もう片方が出力だ。セットの短いLANケーブルは入力用にも出力用に使える。これについては、後で詳しく述べる。
まず、この「外付け」のLANノイズアイソレーターの誕生過程から確かめよう。
「外付け」という言葉は、「内蔵」があったということだ。ウェーバーサは3月に、ヒット作WCoreの内部にLANのノイズアイソレーターを装着する有料アップグレードを実施した。
特許を取得したアイソレーターモジュール(WLAN-INT-Module)を装着し、LANケーブルに乗って入ってくるノイズを画期的に大幅に遮断させるということだった。今後はWDAC3、WDAC3T、WVDACにも搭載予定とのことだ。
ウェーバーサの情報によると、アイソレーターモジュールは丸い円盤のようで、サイズも様々である。「シールドと電磁場などの技術を複合的に活用し、ノイズを完全に遮断することで、背景がきれいになる」という。そして、このモジュールをケースに入れて、文字通り外付けでリリースした製品がWLAN-Isolaterである。
シン・ジュンホ代表が説明するWLAN-INTモジュール
シン・ジュンホ代表に電話をかけた。製品の核心は、WLAN-INTモジュール(INTはInterconnectの略)であるが、より詳細な説明が必要だったからだ。誰よりも筆者自身が納得する必要があった。
- いくつかのブランドのLANスイッチングハブが搭載しているトランスフォーマーコンセプトですか?
シンジュンホ代表:違います。概念自体が異なります。
- それではどのような原理でノイズを除去するんですか?
シンジュンホ代表:特許内容なので全てを説明できませんが、このモジュールが電界と電磁場を形成して、自分自身を通過する信号に割り込んできたノイズを排除する、という程度は説明できます。RFIノイズがLANケーブルでたくさん入って来ますが、これは従来のローパスフィルターでは除去できません。これはシグナル自体に入っているノイズも除去できます。
- 電磁波ノイズだけではなく、信号自体のノイズもですか?
シンジュンホ代表:そうです。デジタル信号は伝送過程で新たなノイズが発生します。相互干渉(Interference)によるノイズです。特に複数対のデータケーブルがある場合、ノイズはひどくなります。
- LANノイズアイソレーターを見ると、短いLANケーブルがセットされています。このケーブルをネットワーク機器側のLAN端子に接続しますか、それともオーディオ機器側に接続しますか?
シンジュンホ代表:ノイズがどこで多く発生するかによります。ネットワーク機器側が多い環境であれば、そちらに付属の短いケーブルを接続してください。一言でいえばノイズに近い側にWLAN-Isolaterを接続します。そうすればノイズを早く取り除けるからです。したがって(ノイズの少ない)WCore側に付けるのはお勧めしません。差が無いからです。一方、ノイズに近い方に長いLANケーブルを接続すると、ケーブル自身がジッタを発生させます。
LANケーブルと電磁波ノイズ
要約すると、WLAN-IsolaterはLANのノイズアイソレーターモジュールが核心で、このモジュールは「電界と磁界を形成してLANケーブルに乗って入ってきたRFIノイズとデジタル信号線自体が作り出したノイズを除去」してくれる。
一つ一つ確かめてみよう。電磁波は私たちの日常生活に広範囲にあるといってよい。欧米圏ではこのような電磁波により原信号が妨害される現象を電磁障害、すなわちEMI(Electro-Magnetic Interference)と呼ぶ。特にオーディオの場合、人間の耳にとても敏感な周波数帯域を扱うため、EMIの通常電磁波ノイズと言う。電磁波が引き起こす干渉を一種のノイズと見ているのだ。
無線周波数干渉、すなわちRFI(Radio Frequency Interference)とは、EMIノイズが無線周波数帯域(10kHz〜1GHz)で発生したときにいう。オーディオのRFIノイズが致命的なのは、この帯域が可聴領域の(20Hz〜20kHz)はもちろん、楽器の音色と空間感を決定する倍音領域の(6kHz〜20kHz)にも影響を与えるからだ。RFIノイズから安全な帯域は、オーディオや映像信号とは無関係のマイクロ波(1GHz〜100GHz)や赤外線(300GHz〜430THz)などである。
そしてよく知られているとおり、これらのEMIおよびRFIノイズを遮断する代表的なソリューションがシールド(shield)である。ところがウェーバーサでは、このシールドだけではなく、電界と磁界を利用してRFIノイズを遮断すると説明している。したがって筆者の推測では、ウェーバーサのLANノイズアイソレーターモジュールは一種のアクティブシールド(active shielding)でLANケーブルに乗って入ってくる電磁波ノイズを除去する原理ではないかと考えている。
一つ一つ
筆者がこのように推定する根拠は、ウェーバーサが公開した写真である。WLAN-Isolaterの2つのLANポートそれぞれに、8つの非常に薄いコイルが接続されており、各コイルは全て円盤状のモジュールを周り、別ポートに出力される。つまり円盤に巻かれたこれらのコイルが一種のソレノイドコイルの役割をして電磁界を形成し、この電磁界がコイルに乗って「すでに」入ってきた電磁波ノイズを「取り除く(cancel)」のではないかと思う。
一方、機器内部にLANポートごとに8つのコイルが割り当てられているのは、LANケーブルの中には8本の線材が入っているためだ。それぞれプラス、マイナスの4対になっている。
試聴
HiFiClubのメイン試聴室で行われたWLAN-isolator試聴では、WRouterとWCoreのコンビ、MSB PremierストリーミングDAC、プリパワーにマッキントッシュ C1100とMC611を使った。
スピーカーはアバンギャルドのTrio Luxury Edition 26。
接続位置はシンジュンホ代表の言葉を参考に、プレミアストリーミングDACのイーサネットポートにWLAN-isolatorの短いランケーブルを繋げた。
Diana Krall - S Wonderful Live In Paris
まずアイソレーターを投入した状態で聞いた。ボーカルと楽器の距離感と分解能が良く、舞台が非常に広く展開される。音自体はとても新鮮で生き生きとしている。アイソレーターを外して既存のLANケーブルをDACに直結すると、別録音のバージョンかのように舞台が狭く窮屈になる。
ピアノの右手の鍵盤タッチ音もあまりはっきりとしない。再びアイソレーターを接続すると、リズム・アンド・フェイスが済んでダイナミックレンジさえも増える。何よりもギターとパーカッション、そしてヴォーカルがよく聞こえる。
以前にシールドがよく処理されたLANケーブルを試聴した際に電磁波ノイズの害を低減したが、これほど大きな違いがあっただろうか。抽象的な言葉ではあるが、音楽性が増して強弱と緩急の違いが増したようだ。
Keith Jarrett - Part II-A The Koln Concert
惚れ惚れとする見事なピアノの音だ。倍音が豊かで背景は静まりかえっている。全体的に再生音が整理された感じだ。まさに「音の実験室」と言えるほど、ピアノ一台からありとあらゆる音が湧き上がってくる。
WLAN-isolatorが思った以上に効果を発揮している。更に聞いていくと、舞台を埋め尽くした密な空気感が消え、ステージ前方の幕が開いたように変わる。キース・ジャレットのうめき声も弱く聞こえるだけだ。ノイズフロアが上がったせいではないかと思う。再びアイソレーターを投入すると、ピアノの倍音が豊かになったのはもちろん非常に柔らかくなる。使ってない時の音がとても硬直した音だと感じるようになるほどだ。音の一つ一つが細かく表現される。
Maria Joao Pires、Augustin Dumay、Jian Wang - Piano Trio No.1 Brahms Piano Trios Nos.1&2
アイソレーターを投入した状態で聞いてみると、本当に静かな背景が繰り広がる。チェロの質感がこれほど生き生きと聞こえるのは久しぶりのことだ。続いて登場したバイオリンはチェロより荒々しく直線的な音を聞かせてくれる。
アイソレーターを抜いてLANケーブルを直結すると、チェロが薄くなり厚い質感がない。舞台の両サイドが切り取られたられたような感じだ。録音はミュンヘン大学の講堂なのだが、その残響が少ないのも惜しい。再びアイソレーターを投入すると、チェロの弓と弦の摩擦音とバイオリン特有の音がよりよく聞こえる。舞台を広く表現できるかどうか、そこがアイソレーターの有無の大きな違いだと思う。
Claudio Abbado、Berliner Philharmoniker Dies Irae、Tuba Mirum Mozart Requiem
確実にアイソレーターを投入した時、合唱団のエネルギーが著しく目立ち、音がにじみ現象も少ない。団員の細かい発音がよく表現されるのもアイソレーターを投入した時だ。つまりは解像力とSNRが増えたという証拠だ。
アイソレーターを抜いてLANケーブルを直結すると「ディエス・イレ(Dies irae)/怒りの日」では舞台の前後距離感が減り、「トゥーバ・ミルム(Tuba mirum)/奇しきラッパの響き」ではテノールのトーンが薄い。再びアイソレーターを投入すると、それだけで1つの体で歌っていたような合唱団が、様々な声部や発声を持った人々へと変わる。メンバーの一人一人が表現されるのだ。「トゥヴァミルム」でバリトンがより鮮明に聞こえたのも同じ理由だ。ソプラノの声はよりツヤが増し、背景は更に静寂を増した。
総評
これまで様々なオーディオアクセサリーをレビューし、電磁波ノイズを確実に除去すると、その効果が非常に大きいことを実感した。ネットワークやLANケーブルに限ってみても、例えばnuprimeのスイッチングハブOmnia SW-8やシルテックのLANケーブルRoyal Signature Network Crownなどが輝かしい音質改善を成し遂げた。それだけ電磁波ノイズが音質を劣化させるという事は想像以上である。
ウェーバーサのWLAN-isolatorもLANケーブルに乗って入ってきた電磁波ノイズを除去し、明確な音質向上の効果を示した。舞台背景が静かになり、音の一つ一つがきれいになったことが最大の変化で、続いてサウンドステージが広くなって空間感が増え、エネルギー、特に低域帯のエネルギーが増した事も目立った。更に多くの点で有意義な変化が起きた。
この他にも、別の電源が必要ない点や、投入位置をネットワーク機器側のLANポートとルータの間、もしくはルーターと機器の間など、ノイズ環境に応じて選んで自由に使える点も長所だ。ストリーミング音源が主流になり、LANケーブルが必須になった現在では、ウェーバーサがまた問題を解決する仕事を成し遂げたような。真剣に比較試聴を勧めたい。
海外価格800ドル
発売準備、予約受付中