好き嫌いに左右されない科学的な音質向上・WSmartHub

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HiFi Clubのコラムから翻訳掲載

希代の詐欺師、フェルディナンド・ウェルド・デマラをご存じだろうか?
彼は一生の間に、時には修道士として暮らし、ある時は心理学者として暮らし、また時には、医師、教師などと自由自在に自身のアイデンティティを変化させた。一時は海軍の軍医として、虫歯で苦しんでいた艦長に麻酔をほどこし抜歯をするなど、軍の医療行為で戦争に貢献もした。医療の経験も無い彼だったが、被弾した兵士たちを見ては勇敢に(?)破片を摘出する手術を執刀もした。しかし実際に行った行為の専門家として当該分野で公式では認定されなかった。無資格だが独学で専門家に成り済ましたサギ師だった。

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ハイエンドオーディオの分野でも、このような生半可な技術的根拠でオーディオ愛好家をたぶらかすケースがしばしば見受けられる。メーカーより雨後の竹の子のように生まれるオーディオアクセサリーの分野で特に多くを占めている。公式の研究、公共機関からどのような特許や技術的な主張のための資格を取得しなければならない義務も無いため、さらに深刻化する傾向がある。特に近年、音源再生の市場が変化し、数多くの多様なデジタル機器が発売され、パラダイムの激変期が続いている。そのためかデジタル関連のチューニング機器が飛ぶように売れている。その中で玉石は埋もれ、見つけ出すことは本当に砂漠で針を探すのと変わらない。

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筆者は個人的にオーディオ関連アクセサリーを多くは使用してない。ケーブルとインシュレーターなどの他を使用することは極めて少ない。もちろん様々なアクセサリーを試しはするが、重要なのは、続けて使う物よりも、しばらく使ってみて、外してしまう場合がはるかに多い。オーディオ関連アクセサリーは大きく分けて二つだ。一つは電源に関連するもの、例えば電源ケーブル、マルチタップ、パワージェネレーター、電源コンディショナーなどがこれに属する。そして二番目は振動に関するものである。ところが、二番目の振動に関するものも電源アクセサリーと同様に、その種類が多い。これもまた大きく分けると、物理的な振動制御や信号伝送経路に類するアクセサリーがある。そして電気と振動など、この全てが合ってノイズを生成する。ハーモニックディストーションとジッターなどは、電気と振動、クロック、ディスプレイなどから生じるノイズの総体を解決すること。それがまさにハイファイの最も大きな課題だ。

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この部分では物理的な振動と周波数応答特性を補正してノイズを除去する方式ももちろん説得力を得ている。インシュレーターやレゾネーターなどがここに属し、アコースティック・音響材もこれを改善させることができる。しかし、根本的な原因を除去する方が最も早く正確な方法である。このような状況で最も簡単に適用できる部分がケーブルであり、DIYチューニング族は、機器内部にシールドとグラウンド設計をいじって変化させたりもする。しかし、問題は最近、デジタル機器のインタフェースが変化し、新しい周辺機器が登場し五里霧中に陥っている。その中でルーター、ハブ、USBデバイスなどが新たなノイズの根源として登場した。機能的にはネットワークストリーミングプレイヤーを再生するための機器が、意図していようがしていまいが、一方ではもう一つのノイズジェネレーターとして害悪として機能することになる。

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便利なネットワークストリーミング機能のために使用する機器が、その機能を実現するために、もう一つのノイズを生成する皮肉が生まれたのだ。そして、これらの周辺機器もまた、ハイファイの最大の課題であるノイズ除去のカテゴリーに必ず含まれるしかない。電子機器でありながら、音源を最もアナログ信号に近く再生しなければならないハイファイオーディオ機器はコインの両面のような特性を持っている。それで、一方では機能を要求し、またもう一方ではその機能による音質的悪影響を気にしなければならない。 それで一般的な電子製品よりもはるかに繊細な特殊な技術が要求される分野だ。一般的な市販のルーターやハブでグラウンド処理のみ気を使っても、音がかなり変化することを経験した人であれば、オーディオ専用機の必要性を既に認識しているだろう。

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WaversaSystemsのWSmartHubは、このようなオーディオ愛好家のニーズに応えるために開発された。ハブとは家の中に入ってきたインターネット回線を複数のネットワーク機器に分配して共有できるようにする機能を持っている。 一般的なパッシブ素子であるケーブルではなく、アクティブな形で動作する電源コンディショナー、もしくは入出力信号の規格を変換するDDCのようなものと例えることもできる。全て機能的には、分配か変換の機能を持っているが、それによって音質がダウンするかアップグレードする二つの余地がある。

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WSmartHubは、このような面でオーディオグレード、つまりハイファイ的なアプローチを積極的に取っている。最初に物理的な側面から見ると、アルミニウムを切削したケースを作って使用した。これはエアアコースティック、ジェフローランド、リンなど、長い間、ハイエンドオーディオの最前線に立ってこの分野をリードするレジェンドたちが採用した方式である。相違はなく、振動を最小限に抑え、電気的に完全に近いシールドが可能な最も効率的で、基本的な方式である。内部的には、各セクションを隔壁処理し、信号の干渉を最小限に抑え、グラウンドノイズを抑制することは、実際の音質にかなり大きな改善をもたらす。

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次に電気的ノイズとジッターの最大の元凶といえる電源部を見ると、予想通りのバッテリー電源部の設計だ。理論的にバッテリー電源がリニア、スイッチング電源など、全ての電源の中で最も良質の電気を発生させることは間違いない。 しかし、問題はその設計にあり、バッテリー電源として常に最高の電源を発生させず、時によっては音質を硬く力の無いようにしてしまう事もある。WSmartHubの場合、リチウムポリマーバッテリーを使用し、インピーダンスを非常に最小化した設計になっている。理論的に見て非常に理想的だと判断される。

ジッターノイズのもう1つの原因であるクロックの場合、WSmartHubはMEMSというクロックを使用している。一般的に多く使用するクリスタル発振子ではなく、新しい形のクロックで、半導体を提供する工程から使用されるものである。マイクロメーター(㎛)単位の超精密部品や電子回路を同時に集積する技術で耐久性が高く、温度による変化幅が少なく、非常に效率的である。現在IT市場で水晶発振器に置き換わり、急激に成長しているのもこのような理由のためだ。もちろんクロック精度もクリスタルクロックに比べて決して劣らない高精度のクロックである。

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この他にも、WSmartHubがノイズを除去して、根本的に封鎖するために搭載した内容はかなり多様でスマートだ。一例として、全てのLEDインジケーターを思い切って取り除いてしまっている。ハイエンドメーカーがディスプレイを無くしたり、または完全にオフにできるように設計する最近の傾向を見ると、簡単だが、地味ながら効率的なノイズ抑制方法である。次に、前面ディスプレイも悪影響を与えないか気になったが、内部的に巧妙な設計になっていた。WSmartHubは基本的にリチウムポリマーバッテリーで動作するが、このバッテリーは純粋にスイッチングハブとUSBハブのための電源として使用する。そしてバッテリー充電やディスプレイは、外部の電源アダプタから電源供給する形で設計され、電源の用途から完全に分離して問題を解決している。

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底面のパネルの他にはボルトも見えないモノコック(monocoque)方式の総アルミニウム切削ケースは、そのサイズの割にかなり重い。前面にはON/OFFが可能なLCDディスプレイのほかに、電源ボタンとメニュー、セレクトボタンだけがシンプルに位置する。背面には計四つのイーサネット端子とUSB Aタイプ1/2とUSB Bタイプ1つが用意されており、電源入力が用意されている。

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HiFi Club試聴室で行われたテストはかなり長い間続いた。スピーカーはピークコンサルト Incognito、アンプはダズルプリ、パワーアンプ、そしてWaversaSystems WDAC3を使用してセットアップした後、WSmartHubを中間に投入した。これと比較したのはNETGEARのハブだったが、結論から言えば、その差は誰もがその空間で聞いてみれば違いは簡単に分かるほどだった。ちなみにNASはQNAP、コントロールアプリはLINN Kazooを使用した。

Die Rohre-The Tube
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Die Rohre-The Tube

まず、真空管機器で録音した[Die Rohre-The Tube](24bit/192kHz、Flac)のアルバムの最初のボッケリーニレコーディングを聞いてみる。もちろんネットギアで先に試聴した後、WSmartHubに変え、そして再びネットギアにし、その後またWSmartHubにし、何度も交換しながら同一の再生テストをした。NETGEARからWSmartHubに変えて最も大きな変化は、フォーカシングとそれに伴う楽器の輪郭の違いである。まるで高解像度で連続撮影した写真で、途中にフォーカシングが揺れた写真を見て、最後にフォーカスがくっきりと結んだ撮影の写真を見ているようだ。残像がきれいに整理され、全体的に強音と弱音のコントラストがより鮮明に捕捉される。WDAC3のイーサネット入力段が劣っているのではなく、WSmartHubという専用のハブの投入によって、隠れて認知できなかったパフォーマンスが発揮されたと表現するのが正しい。特に、全てのテストの重要なピアノの打鍵がいっそうきれいで穏やかな残響が更に自然になっている。

Torsten Nilsson-Cantique de Noel、O Holy Night
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Torsten Nilsson-Cantate Domino

[CANTATE DOMINO]アルバムの中で’Cantique de Noel、O Holy Night'(24bit/88.2kHz、Flac)で音音場とソプラノ独唱と合唱などで行われる立体的なレイヤーがより鮮明に表現される。興味深いのは、左右のサイズだけでなく、上下のステージングで、まるで霧が晴れたかのように、より鮮明なステージが明らかになる。このような現象は、基本的に舞台が狭いためではない。既にWDAC3が再生したステージが、ノイズによって埋もれて視野を塞いでいた音響情報が、明らかになりディテールが鮮明になって起こる現象として把握される。これによって視野がより鮮やかになり、パッと晴れたイメージを確認できる。また、残響を簡単に作るノイズが除去され、クリアーな後味を残す。

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実際に理論的に見ると、このような中間段階のハブの役割は、一種のマルチタップのようなものと類似した側面が多い。電流を最も失わずに「分配」’する事が最大の目的だ。言い換えれば、損失を減らし、分配までやってくれるなら、それで役目は達成される。しかし、多くの場合、直結するよりも良いパフォーマンスを発揮するパワーコンディショナーが存在する。アクティブフィルターの設計に優れた効果を出す電源装置は、極めてまれな一部のハイエンド機器だけだ。例えば、DDCのような場合も、基本的には音源の伝送規格を変換する機器がDDCを通じて音質自体を向上する場合がある。これはハイエンド機器が主張する最小信号経路、損失や歪みを低減することがカギとなるハイファイの基本概念とは異なる。しかし、独自の技術によって、中間に投入して歪みと損失を減らすのはもちろん、音質がさらに向上する場合も経験することができる。実際にHiFi Clubで高性能オシロスコープの測定装置であるTektronixで測定した結果、WSmartHubを使う前後のノイズ波形とレベルでかなり大きな違いを確認することができた。

それにもかかわらず、いくつかの疑問は残った。それでWSmartHubを自宅に持ち帰って、個人的なリスニングルームでUSBハブ機能をテストしてみた。BMC Pure DACをパソコンとUSBケーブルで直結し、USBケーブルはBlue Heavenを使用した。そして以後、WSmartHubを中間に投入し、今度はDACとWSmartHubの間にはUSBケーブル、WSmartHubとパソコンの間に、かつてPS Audio DAC購入時にバンドルされていたケーブルを使用した。中間にハブが入ってUSBケーブルはむしろ更にグレードが低くなった状況だ。しかし、結果は、ハブのEthernetテスト時と同様に肯定的に現れた。

Hoff Ensemble-Dronning Fjellrose
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Hoff Ensemble-Quiet Winter Night

ホープアンサンブル(Hoff Ensemble)の[Quiet Winter Night]のアルバムで’Dronning Fjellrose'(24bit/192kHz)を聞いてみると、パソコンと直結した時より高域と中域がさらにクリアーになった感じだ。バックグラウンドのノイズの相当部分が除去されたのが理由であるようだが、クリアーにシャワーを浴びたような感じで、最も重要な部分は、どうしてもハーモニックスに帰結する。特にピアノ打鍵でのハーモニックスで散漫な感じが消え、さらに正確になった印象だ。これはパソコンから伝わったノイズが除去され、その下に隠されて聴覚が認識できなかった微細なハーモニックス、つまり残響が水面上に上ってきたためと判断される。これは結果的に弱音とハーモニックスのディテールを向上させることにに帰結された。ノイズに抑えられて分からなかった微細な弱音が、汚い服を脱ぎ捨てて完全にきれいな素顔を現す。

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オーディオシステムの中で、多くのアクセサリーはそれぞれの関係がシステム全体の中でシーソーや風船のように作用する。もし、低域をしっかり締めてくれるケーブルは、低域は締めるが、反対に中域が強調されて過剰なになってします。反対に低域の量感を拡張させる場合、低域は満足しても中域が退き、味気なく、薄く細くなり、音楽の勢いが弱まる場合がある。全てのトーンバランスとハーモニックスを多くのアクセサリーに依存する場合、その数は増え、相対的な不協和音が出ることも、肯定的な相乗効果で帰結することがある。まるでヤヌスの二つの顔のようなものがアクセサリーの正体だ。

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しかし、ノイズの除去、電源の改善は風船効果ではない。これは全ての部分で肯定的にならざるを得ない客観的レベルでの向上をもたらす。好みを主張するのではなく、どんな状況でも証明が必要ない客観的事実である。WSmartHubは、ハブとしての基本的な機能だけでなく、科学的理論に基づいて音質的な改善効果も得ることができる本物のオーディオアクセサリーだ。特に、最新のデジタル再生で最も重要な、振動、電源、そしてこれによるジッター、ノイズを除去してくれる多目的な装置で、その価値が高いと判断される。最近のデジタルトレンドをベースにした全てのデジタル再生に欠かせない、スマートな科学的なハブの出現は、両手をあげて歓迎するに値する。