WDAC3の生産ライン

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HiFi Clubのコラムの翻訳掲載

WaversaSystemsのハイエンドDAコンバーター、WDAC3は、8900ドル(約100万円)の価格にもかかわらず、初回生産の100台が2週間の事前予約で完売し話題となった。
※補足:この記事が書かれたのは2015年5月。現在はヨーロッパ、ロシア、中国へ数百台単位で輸出され、WaversaSystemsのヒットモデルになっています。

WaversaSystemsはどのようにWDAC3を生産しているのか、電撃的に工場を探訪して生産工程を調べた。なお、この工場はメインボードの組み立て専門会社である。

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全体の工程についての説明を聞いて生産ラインへ向かった。そこには様々な大型設備と複雑なライン工程が我々を待っていた。人の手で作られるものより精密な機械で作業をし、絶え間なく動くラインを見て製品のクオリティに相当な信頼性を持った。

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今回、WaversaSystemsではPCBボードを白に決めたが、それは製品のバージョンによって色を変えて管理するためらしい。つまりボードの色で製品のバージョンと種類を確認できるということだ。一般的な会社では、緑の基板に文字でバージョン管理を行うのとは根本的に異なるアプローチだ。

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特定の位置にデザインすることをアートワークという。アートワークが終わると、ソフトウェアツールで各部品の中心値を((x,y座標)で確認し、ボードに乗せる座標dataをオーバーラップさせる過程を経て、アートワーク上に記載された設計通りにチップを上げる。の三つをすべてオーバーラップして、事前に部品の位置を確認した後に作業をするが、かなり正確度が高いため、製品の不具合はほとんど発生しないという。

実質的に、私たちがシステム工程で一番最初に確認できる部分は、ローダーというPCB(基板)を供給する装置である。PCBを収納しているが、後ろの設備で製品の工程が終了すると、一つずつ自動的に次のステップへ送る設備である。ローディングする過程で基板が破損する可能性があるため、真空状態で空気で基板を一枚ずつ浮かべ、次のステップへ送る。

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次に進む工程は、スクリーン印刷である。このプロセスは、PCBに特定のマークとメタルマスクのアライメントを調整し、コンピューターによって正確にオーバーラップし、スクリーンする工程だ。スクリーンというのは、はんだ付けされる位置に鉛で覆う工程だが、実際には鉛ではなく、半田クリームという物を使用する(Sn、ag、cuなどの合金で作られたはんだペーストを使用)。この工程は、製品の耐久性と精度の向上、そして環境保護に至るまで、多くの利点を持った工程とのことだ。

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スクリーンプリントをするために作られたメタルマスク。精密な穴をPCBの部品が入る位置に正確に一致させ、はんだクリームを注入する。

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その次の工程は、テレビで、大企業の生産工程でも見たことがあるマウンターだった。マウンタ-とPCB(メインボード)に各種の部品を正確かつ高速に装着する設備で、小さな素子から開始し、大きい素子を組み立てるという。小さな部品を組み立てる機械をチップマウンター(1mm*0.5mm:1005)と言い、大きな部品を組み立てるのはマルチマウンターと言う。

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WDAC3で使用されたマウンター。マウンターが動作し、全ての部品を装着する。

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マウンターが動作する工程を見ると、PCBに部品を乗せるために部品を真空モジュールで吸い上げた後に、あっという間にカメラで部品をスキャンする。コンピューターがスキャンしたデータをもとに部品の中心を確認し、事前に入力されているx/y座標に正確に実装する。あまりにも早くて目にも止らないが、センターをつかめない場合は、部品を組み立てることができないため、誤った部品は別に分類される。

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マウンターを通過すると、全てのチップが所定の位置に入っているか、もう一度やはり最終的に人が確認する。作業の繰り返しになるが、製品の不良率を最小限にするための継続的な検収工程のひとつだという。

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このように人が検査した後、基板に接合されたソルダーペーストを焼いてチップを固定するためにオーブンに入ることになる。驚いたのは、このオーブン自体も窒素発生器を使っている事だった。窒素が入ることで酸素を取り除いて、基板の酸化と腐食を防ぐということだ。簡単に言えば窒素コーティングを施し、製品の耐久性が向上するとも考えられる。

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オーブンで作業することに、もう一つの重要なノウハウが隠れている。基板の面積によってオーブンで焼く温度の設定が異なる点だ。基本的に基板が大きいほど温度が高いのは常識的に想像できるが、その他にも多くの要素が関連して適正温度を確認して均一で高品質な基板を生産する。

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このように組み立て工程を経た基板は、アンローダに載せられ次の工程へと移る。次の工程はAOI(Automatic Optical Inspection)という過程で、コンピューターがPCB基板にある全ての部品をスキャンし、部品が正確に組み立てられたかどうかを確認する。最初に製品をスキャンする工程で少し時間がかかるが、この後からは信じられない驚くべき生産性を見せ、非常に高い精度を見せてくれる。

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しかし、部品の中では外部からの組み立てが正常に見えても、内部で問題が生じる場合も多いという。そのため、目に見えない部分まで入念にX線撮影によって確認作業を行う。基板内部で発生する問題まで事前に防止する緻密さを垣間見た。

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全ての工程の最終段階はやはり人の目しかない。X線まで使って確認した基板を、再び数十倍に拡大して、目で確認し、全ての工程が完了となる。

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単純な基板アセンブリと思って探訪したが、想像を超えた多くの工程と先端設備が二重、三重にめぐる検証の過程を見て、WaversaSystems製品に対する信頼性と期待が高まるきっかけになった。