HiFi Clubのコラムを翻訳掲載
W CORE:パソコンのノイズがオーディオシステムの音質に与える相関関係の考察
コンピューターを利用するUSB-DACとネットワークプレーヤーは、コンピューターノイズが音質に大きな悪影響を及ぼします。そこでネットワーク上のノイズを除去するWSmartHubを開発し、ノイズ除去性能によって格段に向上する音質が評価されています。
WSmartHubは既に存在しているノイズを取り除く製品で、今回新たに開発したW COREは、コンピュータで発生するノイズ自体を無くす、画期的な製品です。HiFi Clubでは、Waversa社のW COREに対する徹底的な分析と検証によって、W CORE製品の特徴とノイズ除去性能、音質的な長所と短所を分析し、この実証データを公開します。
W CORE分析内容
- W COREの紹介:パソコンのノイズがオーディオシステムの音質に与える相関関係の考察
- オシロスコープを使ってパソコンとW COREのノイズの測定
- ネットワークプロトコルとROON、そしてW CORE
- W COREの詳細分析
- W COREの音質向上の効果と分析
16Bit/44.1kHzのCD、24Bit/96kHzネットワークプレーヤー。音質の勝者は?
CDと24bit/96kHzの音源は、情報量は1000倍以上も差があります。テレビで言えば、21インチのテレビで見るDVDと、大型の4Kテレビの差と言えます。テレビでは4kが圧倒的な解像度と自然な色表現をしてくれます。
しかし、オーディオは? 残念ながら一般的な状況では、CDの音がより良く聞こえ、USB-DACやネットワークプレーヤーで聴く24bit/96kHzの高音質の音源がむしろ粗く固く聞こえ、CDの音が良いという意見が多くあります。
なぜでしょうか?スペック的に見れば、高音質の音源が圧倒的に良いはずで、さらにアナログでもないデジタルのスペックなのに、40年前のデジタル技術のCD音質がなぜより自然で滑らかに聞こえるのでしょうか。なぜテレビのように圧倒的解像度のスペックを持ちながら40年前のCDよりも音が良くならないのでしょうか。
最大の原因は、高周波ノイズ、クロックノイズ、ジッターです。連続的な信号が非常に正確な時間に伝達されなければならないオーディオの特性も起因します。オーディオの観点から見れば、コンピューター機器は巨大な高周波発振器なだけです。そして、マルチタスクのためのランダム方式のネットワーク通信プロトコルは、連続的なオーディオ信号の伝送には巨大な壁となるだけです。
音源ストリーミング(USB-DAC、ネットワークプレーヤー)のための必要悪、パソコン
CDに代わる次世代ソース機器として定着したパソコンのストリーミングは、NAS、パソコン、Hubなど一般的なコンピューターやネットワーク機器を必要とします。しかし、一般的な用途で開発されたコンピュータとネットワークを音楽再生用に使用するには、多くの構造的な問題とハードウェア的、ソフトウェア的な問題が散在します。
最も大きな問題は、コンピュータで発生する膨大なノイズ、パケット単位のランダム方式で動作する通信プロトコルがパソコンを利用した音楽再生に非常に大きな悪影響を及ぼすからです。そのため、次善の策として、Async方式のUSB Audio Class 2.0など、補完ソリューションもあるが、根本的な解決策にはなってません。
高性能CPU、高性能コンピュータが無条件に良いか?
最近のコンピューターはとても高速で、效率も良くなってます。3GHzを超えるのも一般的で、6コア、8コアなどマルチCPUまで登場し、競争的に処理速度を高めています。また、4k、5kモニターのサポートのためにGPUも非常に高速で動作します。そして、消費電力を低減するために、非常に効率が良いSMPS(Switching Mode Power Supply)を使います。内部の熱を放熱するために、大きなFANがCPU、GPU、SMPS電源、本体にまで複数搭載されてます。
▲ PC内部にはSMPS電源、高クロックのCPU、GPU、放熱のために複数のFANが使われてます。
このような構造は一般的なデータ処理や、映像の再生には全く問題ありません。ところがなぜ、とりわけオーディオでは問題になるのでしょうか。 オーディオは他の家電製品とは違い、ノイズに非常に敏感で、私たちがオーディオで聞く音楽は切れない連続した信号でなければならないという事です。そして音楽は0.01秒の小さなニュアンスによって99.99%が変わってしまう非常に敏感な信号だということに最大の理由があります。ハイスペックのCPUは、より多くのクロックノイズを発生させ、多くの電力を要求し、多量のSMPS高周波ノイズが放出されます。
それならファンがないパソコンやノートパソコンをバッテリーで使えば音は良くなる?
▲ メインSMPS電源、各種FANも無く、リチウムイオンバッテリーで動作するノートパソコン
SMPS電源部が外部にあり、ファンレスのノートパソコンもあります。ノートパソコンはデスクトップパソコンよりもノイズでずっと有利です。SMPS電源部、FANが無く、CPUも省電力型でクロックも相対的に低いので、ノイズの発生がデスクトップパソコンよりも減らすことができます。
果たしてそうでしょうか?もしもそうならば、電源を接続しないでバッテリーだけで動作させて音源再生をしてみれば、ノートパソコンの方がもっと高音質にならなければなりません。しかし、現実はそうではありません。デスクトップPCやノートパソコンや音質の差はあまり無く、むしろ電源部が強力なハイスペックなデスクトップPCが音質的に優位にある場合もあります。
なぜでしょうか?そこには大きな伏兵があります。マザーボードの内部に散在するSMPS電源モジュールです。コンピューターにはSMPS電源部がメイン電源だけではなく、CPU、GPU、各種入出力機器の電源供給のためにも存在します。それに加え、ノートパソコンで最も多くの電力を必要とするディスプレイのために大容量のSMPSが盛大にノイズを放出してディスプレイに電源供給してます。
パソコンとノイズ
それでは、デスクトップパソコンとノートパソコンで発生するノイズ((高周波ノイズ、クロックノイズ)について集中的に調べてみましょう。そしてW COREと比較して、W COREの強力なノイズ遮蔽能力について調べてみます。
一般的なパソコンの内部構造
▲ 一般的なパソコンの内部構造
上の図のように、SMPS電源、CPU、GPUと冷却のための複数のFANがあちこちにあり、HDD搭載パソコンの場合はDCモーターまで加わって高周波ノイズを電源部と外部I/O機器を通じて放出します。更にパソコンのケースも、数千円だと薄い鉄板やプラスチックになっており、振動の対策も全く無関心です。
電源部で放出されたノイズは、同じラインにつながっている全てのオーディオ機器が高周波ノイズに無防備にさらされ、電源の質が大幅に悪化します。※(オーディオシステムにパソコンをつなげるだけでも音が悪くなる理由です)
Ethernet、USBで接続されたDACに、多量の高周波ノイズを伝送させ、デジタル回路にジッターを発生させて、DACと接続したアナログ機器(プリアンプ、プリメインアンプ)によってアナログ段まで高周波ノイズを転移させてしまいます。
ノートパソコンの内部構造
▲ 一般的なノートパソコンの内部構造
ノート型パソコンの状況もあまり良くありません。上の図のように、メインSMPS電源だけではなく、メインボードに多くのSMPS電源部が存在し、様々な機器に電力を供給するため懸命に動作し、大量の高周波ノイズを発生させます。この高周波ノイズはEthernet Port、USB Portからそのまま放出されます。
マザーボードのSMPS電源部
▲ パソコンのマザーボード(一般的なパソコン、ノートパソコンも同じ)
パソコンのマザーボード(メインボード)を見てみましょう。上記の部分がSMPS電源部です。別のSMPS電源部を利用して、CPU、GPU、USBなどの各構成パーツが必要とする電力をそれらに合わせて供給します。12V、5V、3.3Vなど、様々な電圧が混在して使用されます。
バッテリーのノートパソコンを使用しても一般的なデスクトップパソコンよりも音質的メリットが無い理由です。そして、パソコンの動作特性上、必要に応じてCPUの処理速度と負荷が変化し、ハードディスクやSSD、各種I/O機器が断続的かつ不規則に動作し、ひんぱんに電力量を変えて要求します。それでSMPSは、円滑な電源供給のために、スイッチング周期を変え続けながら電気の供給量を調節しなければなりません。そして、異なる様々な周波数の高周波ノイズが増幅されて発生することになります。
W CORE内部構造
▲ W CORE内部構造
W COREの内部構造です。ノイズが外部に流出するのを防ぐために、トロイダルトランスを使ったリニア電源部が2個とリチウムイオンバッテリーがあります。リニア電源1つはメインボードの電源供給のために使用され、もう1つは純粋にリチウムイオンバッテリー充電のためだけに使用します。
この場合、コンピューターのマザーボード上で発生したノイズは外部に流出されず、全て遮断されます。リニア電源部は電源線に乗って外部に流出する高周波ノイズをブロックしてしまう遮蔽トランス効果を持ってます。
Ethernet Portに電源を供給するリチウムイオンバッテリーは、極低インピーダンス特性で、メインボードから流入した全てのノイズを強力に除去してしまいます。それで全てのノイズは消え、きれいなデジタル信号だけがネットワークポートを流れていきます。
W CORE、一般的なパソコン、ノートパソコンの比較
項目 | W CORE | デスクトップPC | ノートパソコン | 音質との関係 |
Main Power | トランスリニア電源部 | SMPS | 外部SMPS | 電源ノイズ |
SMPS電源 | 最小化 | 多数配置 | 多数配置 | スイッチングノイズ |
Class of component | オーディオグレード | 低コストの部品 | 低コストの部品 | ノイズ発生 |
CPU | 低クロック/低消費電力 | 高クロックCPU | 高クロックCPU | クロックノイズ |
FAN | 無 | 有 | 有/無 | 逆起電力 |
Software | カスタムLinux | Windows / MacOS | Windows / MacOS | コンピュータ使用 |
Graphic Card | 無 | 有 | 有 | クロック、SMPSノイズ |
Network Port電源 | リチウムイオン電池 | SMPS | SMPS | ノイズ外部放出 |
なぜSMPSはそんなに駄目ですか?
▲ SMPSの動作原理
上の図がSMPSの動作回路図です。スイッチのOn/Offを繰り返して必要な電圧を作り出すSMPS回路は、効率は一般のリニア回路に比べて圧倒的に良いが、続くOn/Offと電気使用量によってOn/Off時間を調節するので、非常に様々な周波数帯域の莫大な高周波ノイズが発生します。それに加えて、12V、5V、3.3Vなど多様な電圧を供給して、異なる周波数帯域の高周波ノイズが入り乱れながら増幅されて発振することになります。
▲リニア電源とSMPS電源の比較
SMPSのためにジッターが発生するのは分かった。
だったら、ジッターを完全に無くせないの?
ジッターは、信号に混ざったノイズによって発生する時間差エラーです。これらのジッターによって音質が固くなります。それでルビジウム発振など、非常に精度の高いクロックを使用した外部クロックを利用し、ジッター大幅に減らす方法もあります。しかし、仮にジッター完璧に無くしたとしても、信号とは関係なく、デジタル信号に混ざって入ってくる高周波ノイズは、現実として特別な対策方法がありません。この高周波ノイズはオーディオアナログ部にそのまま流入して増幅されるからです。
結局、ジッターと高周波ノイズで、何がどうなるの?
コンピューターで発生したノイズは電源ケーブルに乗って外部にそのまま放出されます。また、EthernetポートやUSBポートからもそのまま放出されます。このように放出されたノイズは、オーディオ機器にそのまま流れ、音を悪くする原因になります。
下のグラフを見ると、デジタルの1と0の信号を伝送するために、回路内部で伝送される実際の信号は以下になります。回路素子の特性上、完璧な直角のデジタル信号を作り出すことは不可能で、そこにノイズまで加わり、汚い信号が作られるようになります。
▲ ノイズの影響で汚染されたデジタル信号
ジッターエラーの発生
不自然なハーモニーと硬いサウンド
こうしたジッターエラーは様々な形で音質に悪影響を及ぼします。SMPSの強力なパルス波ノイズはデジタル信号に干渉し、上図のようにデジタル値自体を不正確に作ってしまい、デジタルで再生するサウンドで最も重要な時間軸に混乱を与えて「ジッター」を発生させます。
このように再生されるサウンドは、不自然なハーモニーで音色を歪ませ、聞いていて堅苦しく固いサウンドで長時間のリスニングを妨げます。
▲ 汚染されたデジタル信号で現れるOvershootとRinging
これまで、デジタルソース機器のノイズは「ジッター」に限定してきましたが、上のグラフで分かるように、過度なノイズはX軸のデジタルの1と0の時間軸を振ってしまってジッターを発生させ、Y軸の高周波ノイズは電源ケーブルやLANケーブルを通じてオーディオ機器に入り、アナログの高周波ノイズを発生するようになります。
グラフのOvershoot領域は、オーバーシュートはインパルスノイズに該当し、アナログ回路で全帯域にホワイトノイズとして現れるようになります。これが、CDやネットワークプレーヤーが、スペックの低いLPよりも音質が良くない重要な理由です。
高周波ノイズ
汚い背景、ぼけた音像
パソコンで発生した高周波ノイズは、デジタル信号だけが不正確なわけではありません。デジタル信号に現れるOvershootとRinging現象にも関与して音質が大幅に悪化します。このような問題を防止するために、信号間の間にLOW PASS FILTERを置き、信号と関係のないノイズ成分を除去するが、MOSFETに流れる電流が非常に高いために高品質部品を使って完全にアイソレーションしても、アナログ回路で信号の損傷なく全ての高周波ノイズを除去するのは非常に難しく、USBやLANポートによって高周波ノイズがそのまま放出されます。
これらの高周波ノイズはDACでも除去されず、ホワイトノイズとなってアンプまで伝達し、そのまま増幅されます。その結果、背景は汚れ、フォーカスはぼけたサウンドになってしまいます。