デジタル設定の楽しみ/Roon DSPヘッドフォン編

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HiFi Clubのコラムを翻訳掲載

RoonのDSPについて簡単に調べてみました。
アナログセッティングと比較できるほど多くの設定で音質変化を楽しめる機能です。今回はヘッドフォンユーザー向けのDSP機能を探ります。

ヘッドフォン固有の問題に対処するParametric EQ

Parametric EQは、私たちが知っているイコライザーと同一の機能ですが、違いを挙げるならアナログ段でイコライザーを使うのではなく、デジタル部でイコライザーを適用してDACに送ります。そのおかげでアナログEQで発生するディレイ現象や位相が変わって「音質が劣化する問題」が全く発生せず、より効果的に活用できます。更に、Roonに内蔵されたParametric EQは専門家向けに市販されているイコライザープログラムと同レベルのバンドと専門家向けのモードも対応しており、細かい調整をしたい上級ユーザーにもかなり有用です。

このようなParametric EQは、ヘッドファイユーザに更に便利です。スピーカーは周囲の環境によって周波数特性曲線が異なるため適用範囲が限定されており、ヘッドフォンやイヤフォンは周囲の環境の影響が少ないため、様々な測定サイトで提供するデータを活用してヘッドフォン/イヤフォン応答で聴感問題となりうるディップとピークを緩和できます。

図のセット値は、有名なヘッドフォン測定会社から提供された周波数特性を基に製作したEQグラフです。ただし、このEQの適用値は特定の場所で測定されたデータで、使用者の耳の形状や装着方法による変化が考慮されていないデータです。したがって使用者の好みによって調整するのがもっと良いはずです。

Parametric EQセット方法

Frequencyは変更したい周波数と、Gainを調節する周波数の音量です。追加で適用するのがQ値です。Q値は周波数特性を変化させ、どの程度の周波数帯域に変化させるかかを指定し、Qが大きいと狭い帯域での変化で、小さいと広い帯域で変化させます。この3項目を使って、自然なEQセットを作ります。

[Sennheiser HD800グラフ]

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[AKG K701グラフ]

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[Beyerdynamic T1グラフ]

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ヘッドフォンの構造限界を克服するCrossfeed

ヘッドフォンがスピーカーシステムに比べて最も劣悪な部分が’空間感’です。一般的な音楽はステレオスピーカーで聞くように作られるが、ヘッドフォンの場合、左右に正確に分離されて、空間の広がりを認識するのに問題が発生します。特に人間の脳は、両耳に到達する音の時間差によって方向を知覚して音像を確認します。しかし、ヘッドフォンの場合、このような時間差が無い構造なので、音像が自然と頭の中、額の上に認知されます。このような理由でヘッドフォンではサウンドエンジニアが意図する完璧な空間感を備えた音楽を鑑賞できません。

このような問題を克服しようと、ヘッドフォンメーカーは、方向感の代わりにユニット自体で特定の音域帯を増幅したり減衰させて音場を拡張させたり、ハウジングの共振特性を利用して拡散感と残響感を任意に生成させます。オープン型ヘッドフォンのハウジング設計がこのようなヘッドフォンの限界を克服する代表的な方法です。

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▲クロスフィードで有名なSPLヘッドフォンアンプ

この方式が物理的な方法で構造限界を克服し、Crossfeedは人間の耳の特性を利用してフィルターを使ってヘッドフォンに自然な空間感を作り出す技術です。Crossfeedは人間の認知能力と物理特性とも密接な関連があり、複雑な内容だが簡単に基本原理を説明すると、両チャンネルに2kHz以下の帯域を300us程度の時間差をおいて互いに交差させ、頭の上に結ばれる音像を仮想的に前方へ移動させて空間の広がりを生み出します。つまり、人間が認知する方法を巧みに利用して、仮想のイメージを作り出す方法です。これらの種類のフィルターはいくつかの会社が研究しており、多くのやり方が存在するが、代表的にChu Moy’sとJan Meier’sクロスフィルターが有名です。両方式は音楽の好みのようにグラフと数値では表現することが難しく、自分の好みに合ったフィルターを選択するのが良いです。またクロスフィードは使い始めから効果があるが、数日続けて使うと、耳がヘッドフォンからの空間情報信号に慣れてきて更に自然に感じられます。したがって、クロスフィード(crossfeed)効果は、ヘッドフォンの長時間リスニングで、より効果的です。

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Audezeヘッドホン専用プリセット

Audeze製ヘッドフォンのための専用プリセットメニューです。Audeze社のヘッドフォンごとの短所を最大限補完して最上の音質を作ってくれるので、ユーザーなら一度は試さなければならない機能です。

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未来を作っていくRoon DSP

RoonのDSP機能は常にアップグレードしています。更新プログラムでどんなDSPが追加されるか期待を集めています。ヘッドフォンユーザの立場から期待されるDSPは現在AUDEZEだけにあるプリセットが、いくつかのブランドが追加される予定で(すでに論議中だそうです)、クロスフィードよりも発展したHRTFをシミュレートした立体音響DSPが追加されれば、ヘッドフォンユーザーにとって非常に喜ぶべき内容です。